「安全」と言われて放射性物質を摂取し続けた「ゴーストガールズ」。彼女たちは雇用主と最後まで戦った

「ラジウム」をご存知だろうか。
マリー・キュリーが発見した、ウランがエネルギーを放出しながら崩壊していく過程でできる物質である。ウランはご存知、核爆弾や原子力発電所で使用される元素だ。

「ラジウム」は放射線を放出しながら怪しく発光する。
20世紀初頭、有害性を無視し、「ラジウム」は発見以降あらゆる商品に使用されていた。全く根拠もなく、健康に良いとすらされていた。

ラジウムを摂取しながら仕事する女性たち

出典:Wikimedia Commons

戦争の真っ只中、米国ラジウム・コーポレーションが労働者階級の女性に向けた雇用を行った。ラジウムを使用した、時計の文字盤を塗装する仕事であった。

給料は非常に良く、当時の相場の3倍近くであったと言われていて、多くの女性が飛びついた。米の女性労働者の上位5パーセントに入るほどの報酬をもらい、経済的自立を果たしたのである。

時計の文字盤はとても小さく、なかなか骨の折れる仕事ではあった。しかも、「ラジウムが水に溶けてしまうと勿体無い」という理由で、筆を整える時は彼女ら自身の口を使用するよう決められていた。つまり、ラジウムのついた筆をなめていたことになる。
「体に害はないのですか?」と聞いた者もいたという。しかし、雇用主からの回答は「大量でなければ問題ない」という、大嘘であった。

彼女たちは、仕事を終えるとダンスホールに向かう。ラジウムに晒された体は暗闇で発光した。歯に塗る者もいたという。その様子はとても魅力的で、「ゴースト・ガールズ」と呼ばれ、大変もてはやされたとのことである。

徐々にあらわれ始めた「被ばく」の症状

当然、輝かしい時間は長くは続かなかった。
放射線は人体に様々な影響を与える。「被ばく」し続けた女性たちの体にも、徐々に症状が現れ始めたのだ。

一人目の被害者、モリー・マッジャは、歯痛に悩まされ仕事をやめた。痛む歯を抜いても、周りの歯が痛み始める。そして抜いた傷跡には潰瘍ができた。ひどい膿と出血だったという。

のちに手足も痛みはじめ、歩くことができなくなった。医者からは、リウマチと診察され、アスピリンを処方されただけだった。

それからすぐに、モリーの容態は悪化した。顎の骨はスカスカになってしまっていて、歯医者が「軽くつまんだ」だけで、顎の骨は崩れ落ちてしまったという。

最後には、頸動脈を侵され、口内の激しい出血が止まらず、止血が間に合わず死亡した。24才という若さだった。

放射線の影響で顎に肉腫ができた女性 / 出典:Real Clear Life

否認と隠蔽

医師たちは死因を特定できずに困惑し、死亡証明書には「梅毒」と書かれた。
ほどなくして、モリーの同僚も次々と、後を追うこととなった。

雇用主である米国ラジウム・コーポレーションは、二年近く責任を否認し続けた。「ただの噂」として一蹴していたのである。

しかし、当然のことながら業績は悪化、調査が始まる。
専門家は、ラジウムと彼女たちの病気は関係があるとしたが、あろうことかラジウム社は認めず、女性たちが病気を「会社のせい」にしようとしているとして公然と非難し、増え続ける医療費に苦しみ、経済的な援助を得ようとする彼女たちを罵倒した。

さらに恐ろしい真実として、会社側は有害性をはじめから承知していたと言われている。

それでも彼女たちは戦った

相手はラジウム神話を唱える巨大な組織である。それでも彼女たちは諦めなかった。何度断られても、共に戦ってくれる弁護士を探した。

女工たちはだいたい、5年ほどで症状があらわれ、亡くなっていく。あらゆる骨は強度をなくし、背骨は潰れ、足は短くなり、体のあらゆる所に穴があく。

弁護士がようやく見つかった頃には、はじめに声をあげたグレイス・フライヤーは余命4ヶ月とされていた。
彼女はこう語っていた。

「私は自分のことよりも、何百人もの女性たちのことを心配しているのです。今回の件が、1つの例として彼女たちの役に立ってほしいと思います」

出典:YouTube

ラジウム社側は、訴訟を長引かせようとしているようだったという。結果として和解を余儀なくされたが、グレイスが目論んだ通り、世間の目をこの「ラジウム中毒」に向けさせることに成功した。

ラジウム・ガールズ裁判は、雇用主が従業員の健康に対して責任を負わされた初期の事例のひとつである。この裁判によって、労働者の命を救う法規が生まれ、「労働安全衛生局(OSHA)」の設立につながった。
同局は現在、労働者を保護するために全米で活動している。OSHAの設立前は、毎年1万4000人が労災で亡くなっていた。現在はわずか4500人余りだ。

彼女たちは、科学に「計り知れないほど貴重」な遺産を残した。

嘘や隠蔽は現代でも規模に関わらず多くある。
大きな勢力を相手にして、真実を突きつけ、覆すことは簡単ではない。
なにか大きな力に飲み込まれてしまいそうな時には、どんな隠蔽や罵倒にも屈しなかった彼女たちの戦いを思い出してほしい。もしも明日のあなたの勇気に少しでもなるなら、彼女たちの戦いが報われるのかもしれない。

参考:Wikipedia, BuzzFeed